うちの近所に
半年ぐらい前から
少しこじゃれたイタリヤ料理店が開店している
イタリヤ料理といっても
とても小さい店で
実際は何種類かのワインと
少し手の込んだパスタを出すような
お店のようである
ようであるというのは
実は私はまだ一度も伺ったことはないのである
ただ
いつも朝夕の通勤の時に
その店の前を通っているのである
いつもカウンターの席には
お客さんが座っていない
それでもシェフは
厨房で少し前かがみになりながら
何かを作っている
フロアーには
優しそうな女の子が
シェフと談笑している
お客様を待っている様子である
時々 本当に時々
少しおしゃれそうなカップルが
座っていたりして
そんな時はそこのシェフはとてもうれしそうに
手を動かしながら
カウンター越しに
笑顔を浮かべている
私はそんな光景を見ながら
いつも一人
家路に就くのである
そんなあまりはやらないお店でも
店頭には小さな黒板が立てかけてあって
気の利いた季節のあいさつと
その日のお勧めの料理が
かわいらしい文字で書いてある
毎日更新されているのである
一人だけのアルバイトの女の子か
はたまたシェフの
若い奥さんなのか
カウンターに立っているその女のひとが
書いているのだと思う
先日少し酒を過ごして
帰るのが12時を過ぎることがあった
そんな遅い時間には
当然その料理店は
閉店してはいたが
お店の中は薄く光がともっていた
何とはなしにのぞいたら
店長兼シェフのスマートな男性が
一人カウンターに向かって
ノートをとっていた
その日の売上の記帳だろうか
はたまた料理の新しいレシピだろうか
その日はお客さんは来たのだろうか
あまりはやっていなくても
腐ることなく
毎日開店してお客様をお迎えしている
そのお店に
その夜は何となく敬意を感じた
少し酒は入っていたが
えらいなあと思った
どれだけの売り上げがあったかは知らないが
その日その日の売り上げを
夜遅くしっかりつけている
接客業ゆえか
そのシェフの髪の毛は
常に清潔に短く刈りあげられ
嫌味っぽくなく
少し金髪でツンツン立っている
お客様を迎えるための
マナーとしての
お洒落なのだと思う
仕事とは本来そんなものではないだろうか
おそらくそのシェフにとって
そのお店を開店するのが
長年の夢だったのだと思う
ようやく一国一城の主になったのだ
おそらく家賃もそれほど安くはないはずである
一日一日の日売りの積み重ねで
そのイタリヤ料理屋さんは
目立つことなくそれでいて堅調に
日々の暮らしを立てているのであろうなと
想った・・・
もちろんそのシェフは
私の存在なぞ知る由もないはずである
おそらくこんなことを
見も知らぬおっさんから
想像されるなぞということも
大きなお世話なはずである
しかしながら
仕事とは何かということを
何とはなしに感じさせられているこちらなのである
だったら一度のぞいてみたらいいじゃない
その通りである
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